ジョニ・ミッチェルの名曲「サークル・ゲーム」にのせて、たくさんの企業CMを制作しました。
ご本人に原稿をお送りして、曲の使用許諾をいただけたときは、うれしかったものです。
NTTドコモ「パラレル」
(M)Circle game~
女:美味しいものを食べると、いつも思う・・
あ、これ、あの人にも、食べさせたいな。
朝早く家を出る、営業職の夫と、
夜遅くまで、デスクから帰る事のできない、編集者の私。
平行して走る二本の電車のように
二人の時間は、終電近くまで交わることはない。
だから私は、1日に何回か、彼のケータイにメールを送る。
遠くの電車に、手を振るみたいに。
「お昼何食べた?」
たわいのないそんなメールに、しばらくすると返事が来ている。
『天ぷらそば。』
・・すると私は想像する。会社の近くのおそば屋さんで
前屈みで天ぷらそばを食べてる、お昼の、彼の姿を。
「今日は、いい天気ね・・」
『そうだね。今日はずっと外、もうこのジャケットじゃ暑いよ。』
又、私は想像する。
汗をふきふき、ジュースかなんかを飲んでいる
外回りの、彼の姿を。
離れている時間を、そんな風に交差させながら、
今日も私は夫と1日一緒にいる。
ケータイのメールは、
すれ違いそうになる二人の、こころの絆。
とても大切な、夫婦の業務連絡なのだ。
NA:あなたの優しさを、きっと待ってる人がいるから。
今日も、ドコモ。
NTTドコモ「父」
(M)Circle game~
女:たった一度だけ、
父に、手をあげられた事がある・・
ピシリと小さな、頬の痛み。
その感触を、今でもはっきり覚えている。
子供心にも、その時の父は、大人げなかった。
多分、虫の居所でも悪かったのだろう。
その日から私は、少し、父がキライになった。
自分が願う、立派な親とは、違っていたから。
でもこのごろ、ふと思う。
あの時の父は、いくつだったのだろうと。
今の未熟な私より、さらに若かった・・
それでも、懸命に家族を率いて、
始めての子育てに、奮闘していた。
盛り上がらなかったけど、何度も行った家族旅行。
引っ越しで友達と別れ、落ち込んでいた私に
押し付ける様に渡した、子犬。
今だから、手に取るようにわかる、家族への思い・・
父は、立派だったのだ。
ねぇ、もっと教えて・・あの頃の、気持ち。
私が贈ったケータイが届いたら。
無口だった二人の時間を、
取り戻したくなっている自分がいた・・
NA:あなたの優しさを、きっと待ってる人がいるから。
今日も、ドコモ。
2006年
フジサンケイ広告大賞優秀作品賞/ACCファイナリスト